02.16/★★★…3.0 ニコール・キッドマンと、舞台・衣装らの美しさ、ヴィゴ・モーテンセンとクリスチャン・ベールが出演しているから★を付けたけれど、ほんとは★1.0で十分よ!ぐらいの勢いで、主人公の生き方に憤慨気味。

=STORY=
1872年、英国・ガーデンコートを舞台にしたところから始まる、ある女性の人生と孤独を描いた愛憎劇。主人公の女性、イザベルは、若く美しく、自立心に富んだ、教養もあるアメリカ人。周囲には、その魅力にココロを奪われた、従兄を含む男性三人の存在があった。
アメリカからイギリスの叔父の元に身を寄せていたところ、叔父の死によって莫大な遺産を受け継ぐことになり、彼女の人生の歯車が軋み始める。
財産を受け継ぐ前、またある男性と出会う前は、志を高く持っていて「自由でいたい」という理由で、それを奪う結婚なんて出来ないと思っていたが、そのであった男の悪魔的魅力に翻弄され、「自分の意志で、彼を愛している」と思って、結婚してしまう。その男が本当はどんな男なのかも知らずに...
その男を自分が選んだのは、自分が自分の本心から愛していると思ってのことだったのだが、でもそれはある残酷で悪意ある企みによってのものだったのだ...

=FEEL=
見た目的には、19Cのヨーロッパを、うっとりするくらい美しく描いている作品。がしかし、その見た目(舞台・衣装他)は美しいのだけれど、正直、なんかうんざりしちゃうような話である。
全ての事象に対して「自分の感情を抑えるという「分別と慎み」ってなんだよ〜?」っていいたくなっちゃうような感じ。
19Cイギリスの風物と文化については、多少興味があるので、全く知らなかった頃よりはずいぶん分かってきているつもりだったんだけど...
そういう時代だった、という知識とは別に、ワタシのココロが、この物語と主人公の女性を、完全否定してしまう。
19Cイギリスでは、とにもかくにも自分の感情をおおっぴらにして動くのを良しとしない道徳観念があった。そして、当時イギリス女性には財産を受け継ぐ権利もなかった。(下段、MEMO参照)
この作品の主人公・イザベルは、アメリカ人だったから女性でも遺産を受け継ぐことが出来たのだろうけれど、彼女は気持ち的には、階級制度と妙な道徳観念に毒された、イギリス人そのものだったのだろう。それもしょうがないことなんだけれど。「そういう時代だった」ということは知ってはいるんだけれど、それにしてもワカリマセン、この貴婦人の考えてることとその矛盾。
彼女に全く敬意を払えなかったのは「そうね、ワタシは現代を生きるオンナだからねぇ」と思うしかないのかも...

ワタシだったら...自分自身が莫大な財産を持っていたとしたら(これはちょっと大事、なかったら勇気は半減しちゃうかも)、そして結婚した相手と、愛し合う状態でなく、心と言葉のもつ意味が全く通じ合ず、不幸な籠の鳥のような状態になっていてそれを自覚していたら、絶対にその相手とは一緒にいられないだろう。
しかも、どんな志を持っていたのかはイマイチ不明だったのだけれど「自由でいたい」なんてのを念頭に掲げ持っていたのだったら、こんな惑わされ方をしたら、惑わされたことに対して自分なりの復讐の鉄槌を下すだろう。
せっかく自立していけるだけの財産...というか、何に使っていいかわからないほどのものがあり、いい友人にも恵まれているというのに「自分の感情をおおっぴらにしない、特に激情的なものはタブー...」なんてものに縛られて、ただ孤独に怯え、苛まれるだけの人生なんて、真っ平ご免である。
その辺が、この女性の人生に起きた悲劇に対して、ワタシとしては騙されてしまったという愛すべき愚かさはよく分かるが、その後の数年間に気付くべきだったこと、また行動すべきだったことについて全く何も出来ていなかったところには、哀れみも同情も感じず、ストーリーを不快に感じるだけになってしまったのだろう。

自分を持つということと、孤独は、どうしても切れない部分はあると思う。でも、元々人間なんて孤独なもの。同じものを観ても全く違う印象を感じたりすることがあるほど、それぞれの個性があって、完全に分かり合えることなんてない、全き違う存在なのだから。
それをどう自分のココロの中である部分は認め、ある部分は諦めて、いろいろなものを包括して考えていけるかが鍵なんだろうと思う。
ワタシとしては、汚いことを言うが「人生には自由と友人、愛情、そしてお金が必要」なので、その大部分を満たしている彼女が、何故もっと自分が幸せになるための努力をしなかったのかということに不満が残るのだった。

良かったところが一つ。イザベルの従兄の、本当の愛情。彼の「彼女を自由にするために」という気持ちと行動は、本当にそんな愛情を捧げられたら、なんと素晴らしいんだろうと感じさせられずにはいられない。また、自分もそんな愛情を、自分が愛するヒトに捧げることが出来たら素晴らしいだろうと思った。

出演者の名前を調べている時に、ココにヒットした。
[淀川長治の銀幕旅行]
http://www.sankei.co.jp/mov/yodogawa/97/970121ydg.html
そっか、故・淀川長治氏の生きた時代の感性には、このヒロインの生き方、マッチしてたんだ...はうぅ、ワタシは全然だめですぅ〜、ココに書かれている『女性はひとり残らずこの映画に酔いたまえ。男性はこの“女”の貪欲に、女はコワイーと叫ぶがよい。(引用)』って、ワタシには「え、何それ、どう酔えっていうの、どこが貪欲なの?」という感じ。
はっ!!!もしやワタシがすでに貪欲だから分からないの?なんて。

---MEMO---
いつからのことか、また、いつ変わったのかはよく分からない(調べていない)のだけれど、19Cイギリスでは、女性には財産を受け継ぐ権利がなかった。
爵位は長男のみが相続し、父親がいくつかの爵位を持っていれば、高い地位の順に子へも与えられる。子供が女児しかいない場合は、受け継がれる場合もあった。また、女性は結婚によって、相手の男性(または二人の間の子供)へ爵位をもたらすことが出来た。
(※爵位についてはちょっと込み入ってて難しいので、よく分からない部分があります)
財産は父から男の子へ受け継ぐのが筋。もしも死亡時に男児がいなければ、その遺産は兄弟や甥など、その血筋の男性に譲られるという法律があった。
そのせいで、女性は夫や父親が死ぬと、今まで自分が住んでいた家を追い出されてしまうような悲劇もあった。
そういったことを描いた作品に[いつか晴れた日に]等がある

ニコール・キッドマン/主人公の貴婦人:イザベル・アーチャー
ジョン・マルコビッチ/イザベルと結婚する:ギルバート・オズモンド
バーバラ・ハーシー/マール夫人
マーティン・ドノヴァン/イザベルの従兄:ラルフ・タチェット
ヴィゴ・モーテンセン/アメリカからイザベルに恋焦がれて追ってくる:キャスパー・グッドウッド
リチャード・E・グラント/イザベルに求婚する:ウォーバトン卿
ヴァレンティナ・チェルヴィ/パンジー:イザベルの義娘
クリスチャン・ベール/イザベルの義娘に結婚を申し込む青年:エドワード・ロジエ

DVD ビクターエンタテインメント 2001/01/24 ¥4,700

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